[レポート] 大地の再生講座〜大地の呼吸を維持する石畳・石積み花壇づくり(小さな防災の家)

「小さな防災の家」にて、今回は「石積み・石畳」をテーマにした講座を開催いたしました。

2ヶ月前の講座では、エントランスの側溝を固めていたコンクリートを破砕(はつり)し、水脈を掘って地中への浸透機能を改善。丸太と石を使って心地よいエントランスへと仕上げました。

▶︎ 当時の講座の様子はこちら

しかし、それから2ヶ月の間、じっくりと観察を続けたことで新たな課題が見えてきました。

公道とエントランスの境目に入れた水脈が、「泥アク(雨水とともに流れてくる微細な泥の粒子)」で詰まりやすいことが分かりました。この場所はコンクリートの面積が広く、傾斜もあるため、水脈の幅や深さを広げるだけでは流れてくる泥アクを治めきることが困難です。

エントランス(施工前)
エントランス(施工前)

そこで今回は、詰まりの原因となっていたコンクリート自体をさらに剥がし、大地が呼吸できる「石畳」へと置き換える大胆なプランを実施することにしました。

今回は、栃木県を中心に活動されている大地の再生関東甲信越メンバーの根岸大輔さん(植木屋ねぎし)を講師にお迎えし、石を用いた施工のレクチャーを受けながら、参加者の皆さまと共にお庭を作り上げていきました。

コンクリートから、呼吸する石畳の下地づくりへ

まずは、既存のコンクリートを破砕する作業からスタートです。

ここで破砕したコンクリートはただのゴミとして捨てるのではなく、今後の工事や作業で基礎を安定させるための「ガラ石」として再利用します。大地の再生では、敷地内にあるすべてのものを大切な資源として循環させていきます。

コンクリートを取り除いたあとは、石(グリ石)がしっかりと収まるよう、深さ20cmまで地面を掘り下げます。仕上がりのグラウンドレベル(地面の高さ)に対して深さが一定になるよう、糸をピンと張り、これを基準に丁寧に掘り進めました。

ここからが、大地の呼吸を守るための大切な下地処理です。

まず、地中深くまで水と空気が浸透していくよう、長さ約90cmの「焼き杭」を何本も地中に打ち込みました。その上で、竹炭、籾殻くん炭、藁(わら)を層にするように敷き詰めていきます。

この通気通水・保水保気に優れた有機物の層が上に置かれる石と地面の間に挟まれることで、土壌内の微生物の活動が飛躍的に活性化し、地中の環境改善がグッと進んでいきます。

焼き杭の頭が見えなくなるまで打ち込んだあと、竹炭・くん炭・藁を入れていきます。
焼き杭の頭が見えなくなるまで打ち込んだあと、竹炭・くん炭・藁を入れていきます。

なお、この「焼き杭」には非常に面白い物理的な仕組みがあります。

石畳の上を人が歩くたびに、その小さな振動が焼き杭を伝って地中深くまで届きます。杭が微振動を繰り返すことで、杭と周囲の土のあいだにわずかな隙間(遊び)が生まれ、ここが水と空気の動線になるのです。

つまり、「人が歩いて振動が伝わるたびに、地中が自然とほぐされていく」という仕組みです。これにより、特別なメンテナンスをしなくても地中の通気浸透機能が末永く維持され、健やかな脈の形成を助け続けてくれます。

※深さ20cmまで掘ることで大量に出た土は、お庭へ運んで炭や落ち葉と混ぜ合わせ、ふかふかの畝(うね)に仕立てました。今後の野菜づくりに活用していきます。台形の畝のままだと風雨で崩れやすいため、周囲に剪定枝や丸太を柵(しがら)ませて、美しい花壇のような形に整えています。

掘り出した土で作った土留めの花壇(畝)
掘り出した土で作った土留めの花壇(畝)

「財」としての石選びと、点で支え合う石畳づくり

続いては、石畳に命を吹き込む「石選び」です。 石畳に適した石には、いくつかのポイントがあります。

  • 縦長の形状であること(地中に深く刺さることで安定するため)
  • 面(つら・表面)が平らであること(歩きやすさのため)
  • 面から下の方へ向かって窄(つぼ)んでいる形状であること
  • 石を据える場所の深さに応じた十分な長さがあること

面の広さは、あえて大小さまざまで構いません。均一なものを綺麗に並べるよりも、多様な形状の石を組み合わせていったほうが、仕上がりが圧倒的に自然で美しくなります。

縦長で面が平らなものを選びます(赤線イメージ)
縦長で面が平らなものを選びます(赤線イメージ)

今回使用した石は、山梨県大月市の奥山に廃棄されていたものを活用しました。廃棄処分するにも費用がかかるため、そのまま放置されがちなものですが、大地の再生の現場においては環境を整える素晴らしい資材(財)となり、マイナスからプラスの価値へと転換させることができます。


石を隣り合わせに据えていく石畳づくりでは、石と石の接点を「点」で合わせることを意識します。ひとつひとつ形状が異なる自然の石ですから、タイルやレンガのように均一に隙間なく並べることはできません。石のあいだに隙間があってもまったく問題ありません(最後に調整するため)。それぞれの石が「点で互いに支え合っている」ようなイメージで、パズルのように配置していきます。

石の形状を見ながらひとつずつ並べていきます。
石の形状を見ながらひとつずつ並べていきます。

石の長さもそれぞれ異なるため、あらかじめ張っておいた糸を基準に表面の高さを揃えながら、石の下に割った瓦やコンクリートガラ、砂利などを挟み込んで高さを微調整していきました。

割ったレンガを縦に刺すことで、石の調整と地中への通気浸透の両方を兼ねます。
割ったレンガを縦に刺すことで、石の調整と地中への通気浸透の両方を兼ねます。

一面に石を敷き終えたら、隙間の目地に竹炭や落ち葉をしっかりと詰め込んで仕上げます。こうすることで、目地が天然のフィルター(泥越し機能)となり、上から流れてくる泥アクをろ過して目詰まりを防ぎ、地中への豊かな通気浸透機能を保ち続けることができるようになります。

目地に竹炭・くん炭・落ち葉を入れて仕上げ
目地に竹炭・くん炭・落ち葉を入れて仕上げ

植物との心地よい境界線。石積みの花壇づくり

石畳づくりと並行して、エントランスからお庭へと続くアプローチの脇に「石積みの花壇」を造成しました。 これまでは丸太や水脈を使って花壇とアプローチの境界を作っていましたが、植物が成長した際にお手入れがしにくく、区切りが曖昧になってしまうことが課題でした。ここに石積みを設けることで、植栽エリアと歩行エリアに自然で美しい境界線を引くことができます。

植栽とアプローチの境界を、まずは段切り
植栽とアプローチの境界を、まずは段切り

石積みのための石選びは、石畳とは異なり「横長で幅広く、表の面から奥にかけて傾斜(奥行き)があるもの」を選定します。

花壇の石積みを行う場所をまずは階段状に「段切り」し、下地として竹炭、落ち葉、くん炭を撒いて藁を敷きます。 石を積む際は、据え置いたときに「石の上面が奥(山側)に向かって少し下がるように傾斜させること」、そして2段目を積むときは「『品』の字になるように、下の石2つの継ぎ目をまたぐように重ねること」が基本です。奥への傾斜が強くなりすぎるときは、奥に小さな石や瓦を挟んで角度を調整します。

奥に傾斜するように据え置きます。
奥に傾斜するように据え置きます。

1段目の石を据え置いたあと、段切りをした隙間に炭や落ち葉、砂利をしっかりと詰めて1段目をがっしりと固定。その後、同様の手順で2段目を積み上げました。

1段目。2段目は「品」の字になるように積んでいきます。
1段目。2段目は「品」の字になるように積んでいきます。

今回は2段で十分に高さが出たため、これで花壇を完成としました。

石積み花壇が完成しました。
石積み花壇が完成しました。

▶︎ 当日の様子を動画でもご覧ください(Instagramリール動画)

工事を終えて:柔らかに変わった、暮らしの風景

施工が完了したエントランスは、直線的だったコンクリートの面影はなく、全体が美しい流線型を描く自然な佇まいに生まれ変わりました。

エントランス(施工後)
エントランス(施工後)

完成したその場に立つと、敷地に入り込んでくる風の質が、明らかに柔らかく変化したことに、みなが気づきました。

コンクリートで固められていたとき、いかに風が直線的に冷たく入り込んでいたのかを、参加者みんなで肌を通して体感することができました。

「小さな防災の家」において、石積みの施工が必要な箇所は他にもまだ残されているため、8月に改めて講座・工事を開催予定です。日時などの詳細が決まり次第お知らせいたしますので、ぜひ楽しみにお待ちください。

皆さまのご参加を、心よりお待ちしております。

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