前回の「エントランスの石畳」と「アプローチ脇の花壇」に続く、石積み講座の第2回を開催しました。

今回の舞台は、敷地裏側にある法面(のりめん)です。
もともとこの場所には、焼き杭や枝・丸太を使ったしがらみ(柵)の土留めを設置していましたが、長年の風化によって強度が低下していました。そこで今回、石積みによって強固かつ自然に馴染む形で施工し直すことになりました。

石積みにすることで法面を長期的に保持できるだけでなく、石の隙間(空隙)を通じて水と空気が常に動き続けます。
土壌の通気・通水・浸透性を高めることで樹木の根の発達を促し、将来的に「植物の根が石と絡み合いながら地形を支える仕組み(生物的補強)」をつくり出すことが、今回の大きな目的です。
敷地全体に風を届ける「風道の草刈り」
作業は、まず敷地全体の「風通しの改善」からスタートしました。
今年は雨が多く植物の成長が非常に盛んなため、風通しの悪い箇所はそのまま放置すると藪化が進行しやすくなります。そこで、敷地の東西南北に「風の通り道」を作る草刈りを行いました。

敷地全体に流れる風が、今回石積みをする法面のエリアとも繋がり、地形全体を風が吹き抜けていくイメージです。
風が通ることで過度な湿気が抜け、藪化が抑えられます。さらに、覆い茂っていた草を適度に刈って光と風を入れてあげると、地表部を覆う背の低い植物たちが育ち始めます。その表層の根が張ることで土の団粒化(ふかふかになること)が進み、保水力と通気浸透性が同時に高まっていきます。好気性(酸素を好む)の植物が増えることで、見た目も柔らかい印象へと変わっていきます。
この「風の草刈り」による、風と水の働きをさらに高めるために、以下の2つを行いました。
- 際(キワ)を直角に刈り込む:刈る場所と草を残す場所の境目を「直角(垂直)」にハッキリと刈り込みます。刈り取った境界の段差に風がぶつかることで、奥の草むらの中まで風をグッと押し込んでいく効果が生まれます。
- 表層のモグラ点穴:草刈りとあわせて、際のラインに三角ホーや移植ゴテで深さ5〜10cmの点穴を掘りました。風と雨の力を活用して、地中の呼吸を促す「脈」を作ります。
下地づくり
風を通したのちに、敷地裏手へ移動し、石積み作業に入りました。まずは下地作りです。
- 枝柵土留めの解体と段切り:既存の土留めをすべて外します。その後、地形の斜面に合わせて階段状に土を削る「段切り」を行いました。
- 地中への浸透脈づくり:バールを使い、深さ約30cmの穴をいくつも穿ちます。穴の中には竹炭、くん炭、そして穴のサイズより細い枝を数本差し込みました。こうすることで穴の構造が崩れず長持ちし、降った雨が土深くへとスムーズに浸透する水脈として機能します。
- グリ石の打ち込み:ワラを敷いた上から、下地となる割栗石(グリ石)を地面に打ち込みます。このグリ石は、コンクリートブロックを砕いたものを利用しています。地表と積む石の間にグリ石を挟むことで、接地面が目詰まりを起こさず、点と点で重みを支え合いながら水と空気が循環し続けるクッション層となります。



強度と美しさを生む「石の選定」
今回は裏手の通路が狭く、奥行きを深く取れません。そのため、限られた奥行きに収まる石を厳選して使用しました。

- 正面(面:つら):積み上がった時に一番見える部分です。できるだけ平らな面を持つ石を選ぶことで、仕上がりの見栄えが美しくなります。
- 天面と奥行き:上が山型に尖っている石は、上に乗る石が安定しないため避けます。天面が平らで、かつ「手前から奥(斜面側)に向かってわずかに傾斜が下がっている石」を選びました。こうすることで、上の石を積んだ際に重力が自然と奥側にかかり、手前の通路側に崩れ落ちにくくなります。
「品の字」に積む石積みと裏込め
準備が整い、いよいよ積みの工程です。
- 1段目:グリ石の上に石を並べ、奥への傾斜を確認しながら設置します。1段目の石と段切りした斜面の隙間に砕石(裏込石)を入れて固定します。この砕石の隙間もまた、大切な水と空気の通り道になります。
- 2段目以降(品の字で積む):下の段の「石と石の継ぎ目」の上に、上の段の石の真ん中が来るように配置します(漢字の「品」の字をつくるイメージ)。面ではなく「点」で重みを支え合わせることで、噛み合わせが強固になります。
- 天石(一番上の段)の調整:3〜4段目で目標の高さになるため、あらかじめ一番上の段に使う「重くて大きい石」や「平らな石」をピックアップしておきます。最後に上から全体の高さを揃えつつ、重みで全体をギュッと抑えて安定させ、裏込めを行って施工完了です。




生き物と根が引き継ぐ「永続的な強度」
仕上げとして、石と石の微細な隙間にワラや落ち葉を入れ込みました。
この落ち葉やワラは、やがて土中の微生物の働きによってゆっくりと分解(腐蝕)していきます。すると、その有機物を求めて植物の根や木の根が石の隙間へと自ら伸びてきます。
施工直後は石自身の重みと噛み合わせで支えられていますが、時間が経つにつれて「伸びた根が石をしっかりと抱きかかえる」ようになります。根と根が絡み合うことで石垣はより強固になり、同時に根が張り巡らされることで水と空気が通る空隙が半永久的に保たれます。

作業現場は非常に狭く、横一列で作業するような限られた環境でしたが、石を運ぶ役、積む役など全員で自然と連携し、時間内に無事完了することができました。

