2025年6月2日・7日の2日間にわたり、山梨県上野原市西原地区にて、「皆の実家〜カーサ・パチャミリ〜」の敷地内で大地の再生講座工事を実施しました。
今回の現場は、築130年の古民家。この場所は、施主さんが「自然の中で暮らし、たくさんの人が集える場所をつくりたい」という思いから購入されたもので、豊かな自然と人とのつながりを再生するプロジェクトの第一弾となります。
▶講座の様子はこちらのリール動画からもご覧いただけます
古民家の再生と共に、「大地の再生」が必要だった理由
かつてこの古民家は、地域の人々が集い、支え合う拠点として活用されてきました。建設に携わった方々の名前は、今も家の一角に残されています。
しかし現在は、人口減少とともに利用されなくなり、建物の周囲も環境変化にさらされています。特に、後年の増築によるコンクリート基礎が風の通り道をふさぎ、裏山の斜面も荒れている状況でした。
このような背景から、「古民家の再生」はまず「大地の再生」から着手する必要があると判断され、今回の講座工事の開催に至りました。
大地の再生の講義とフィールドワーク
講座の冒頭では、古民家内にて大地の再生の考え方、視点、施工方法や事例を共有。

その後、参加者全員で敷地を歩き、目で見て、匂いを感じ、風の流れや湿気、地面の固さなど、五感を使って現場を観察するフィールドワークを行いました。
斜面地の再生:風と水の流れを整える
まず着手したのは、古民家裏手の斜面地。

全体に草が生い茂り、木の枝も剪定されず垂れ下がっており、風の流れが滞る状態でした。
- 斜面変換線を開いて筋道を通し、枝葉を剪定
- 地形が見えるようになった後、水脈整備を実施
- 掘削した溝が崩れないよう、周囲の剪定枝を柵のように組み込み、仕上げ
また、石垣の一部が崩れて土砂が流れ込んでいた箇所には、焼き杭と丸太を用いた土留めを設置。


段切り部分には縦方向の浸透機能を持たせ、枝柵を通じて泥水がろ過される仕組みとしました。
敷地外周の水脈整備
施工前は、屋根からの雨水や裏山からの水がそのまま敷地内に溜まり、ヤブ蚊の発生源となっていました。

今回の講座では、敷地外周に水脈を整備。

これにより、雨水が地中に浸透しきらなかった分は水脈を伝って敷地外へと流れる構造を作りました。
同時に、土中の空気も排出されることで、水と空気の動く環境が整えられ、自然の呼吸が戻ってきます。
土を活かした花壇づくり
水脈施工により発生した大量の土は、廃棄せず現地で活用する方針のもと、古民家隣の牛小屋跡地を活用し花壇を造成しました。

- その場にあった丸太を利用し、土を盛りながら花壇の囲いを作成
- 形や位置は、参加者同士で意見を出し合い、その場に最適なデザインに
- 雨水対策として水脈を入れ、丸太の崩壊防止処置も施しました


また、庭先の石囲い花壇も改善。
泥詰まりしていた石の隙間に水脈を入れなおし、炭・石・枝で柵構造の花壇に仕上げ。

これにより、健全な水と空気の流れが生まれ、ギボウシ・セダムの植栽環境も整いました。
施主さまの声:空気の流れと気持ちの変化
2日間にわたる講座を終えた後、施主さまより心温まるご感想をいただきました。
「ひとつひとつの場所だけでなく、全体的に爽やかでとっても明るい感じになったのを感じました。
水脈が繋がると、こんな風にひとつになっていくんだな〜と感じました。その後も、気がついたら2人で『大地の再生』が始まっていて、夕方まで外で過ごしていました。
オーナーの弟さん夫婦も訪れ、イワタバコの話で来年の花を楽しみにしてくれました。
”どこから手をつけたらいいか分からなかった場所”が、“自分たちでやりたくなる場所”に変わってきたようです。
水脈の道とともに、私たちの道も作っていただいたように思います。」
今後に向けて

「皆の実家〜カーサ・パチャミリ〜」は、今後も地域の人々と連携しながら、手を入れ、育てていく場所として運営されていきます。
引き続き、定期的なメンテナンスや改善のための講座開催も予定しています。
大地と共に暮らすという選択、その第一歩となった今回の講座工事。
これからこの場所が、ますます多くの人々にとって“帰れる実家”となっていくことを願っています。