2025年1月25日(土)と31日(金)の2日間にわたり、大月市梁川町の個人邸にて「大地の再生講座・工事」を開催しました。
本講座では、その土地にある風土を学び、持続可能な暮らし方を考えることを目的とし、参加者と共にフィールドワークおよび環境改善の実践を行いました。
梁川の自然と歴史
梁川には、樹齢500年を誇る欅の木がそびえ、人々の暮らしを長く見守ってきました。さらに、地域には龍神伝説が伝わり、旧甲州街道をゆく旅人への目印となっていました。

この欅の木の近くには、かつて豊かな水を湛えた沢が流れており、住民が洗濯や食事の準備に活用していました。しかし現在、護岸整備によって沢はコンクリートの三面張りとなり、地表と地下の水の流れが分断されてしまっています。

これにより、地下の水が滞留している可能性が高く、実際に数年前には、沢のそばで土砂崩れが発生しています。地震時の液状化も心配です。
欅の木の下流には龍神が祀られていましたが、現在は上流のお寺へ移されました。

このお寺の沢も護岸工事が進み、水の流れが滞っている状況でした。

フィールドワーク
フィールドワークでは、地域の地形や水の流れ、植生の変化を観察し、自然環境の成り立ちを学びました。

「十二天」と呼ばれる祠は、大きな岩盤の上に位置しており、地形の変化に伴い風が渦を巻く場所でした。この風の流れは地中の水の動きと連動し、土地のエネルギーを高める役割を果たします。こうした地形的な特徴を古くから人々が感じ取り、祠を設けていたと考えられます。

しかし、伝承が途絶え、過疎化により人手不足となり長らく藪化しています。10年ほど前に近隣の有志が整備を始めましたが、高齢化や都市化の影響で手入れがなされず、近年は再度藪に覆われてしまいました。
欅の木の観察
サポートスタッフの樹木医さんに欅を観てもらったところ、この欅は幹が直径3メートル以上の巨木で、過去に何度も枝が切られたことで樹勢が弱まっているとのことです。
一方、引き続き根はしっかりと張っており、地下の水を吸い上げながら地面の保水を担う役割を果たしていました。
なお、防災のための護岸工事計画により、この欅の伐採が決定されているようです。
木々は一度伐採されると、その機能を取り戻すのに数十年を要します。人の利便性を優先した開発が進む中で、樹木が果たす環境保全の役割が見過ごされている現状について、参加者それぞれが改めて考えさせられる機会となりました。
個人邸の環境改善
今回の環境改善作業は、空き家となり管理が難しくなった個人邸で行いました。

敷地全体の地面が乾燥しており、以下の点が主な要因と考えられます。
- 四方がコンクリートに囲まれ、地中の水脈(水の流れ)が分断されている
- 除草シートの敷設により地面が踏み固められ、水と空気が浸透しにくい地表部になっている
- 上記により下草が育たず、地中に水を蓄える機能が失われている
これらの課題を改善するため、以下の作業を行いました。
水脈・点穴
地中へ水を浸透させるため、敷地全体に水脈を掘り、点穴を開けました。点穴は深さを変えながら設置し、水の流れを調整しました。

敷地の中に何本も水脈を入れ、空気と水が動く環境を作りました。これをきっかけに、地中が呼吸をし始めます。

コンクリートが敷設された道路との境目、植栽の周りにも水脈を掘っています。なお、水脈や点穴には炭やくん炭、落ち葉を入れ、土中の微生物の成長を促しています。

砕石が敷かれていたところは、水脈を入れるところの砕石を取り除き、地中への浸透性を向上させました。

最後はウッドチップ、藁を敷いて、地表部が乾燥せず保水保気が維持される環境にしました。

庭木の風通し剪定
枝葉が密集している箇所を間引き、風通しを改善しました。ただし、樹勢が弱まっているため、過度な剪定を避け、適度な調整にとどめました。


まとめ
今回の「大地の再生講座・工事」では、地域の自然環境や地形、信仰や伝説などを理解し、「相似象」を意識しながら実際に環境改善の作業を行うことの大切さとやり方を学びました。

2日間にわたり、手作業で環境改善を進めました。今回の取り組みによって、地上と地下の水と空気の流れが回復し、庭の植生が本来の力を取り戻していくことが期待されます。春の芽吹きとともに植生の変化を観察しながら、持続的な手入れを行っていく予定です。
今後も、人と自然が共生できる環境づくりを目指していきます。