大地の再生®️の手法を用いた施工から1年。昨年6月に施工を行った山梨県北杜市の個人邸にて、今回はメンテナンスを兼ねた1日工事を行いました。
前回の施工によって生まれた環境の変化や、施主さまの日々のお手入れによるお庭の育ち具合を確認しつつ、顕在化した課題に対して、施主さまご自身が継続的にメンテナンス可能な「手作業で行える環境改善」を実施しました。
現場は「泉」のつく、もともと水の豊富な地域
今回の舞台は、山梨県北杜市。地名に「泉」という文字が含まれることからも分かるように、もともと水が豊富な地域であり、周辺には美しい田んぼが広がる場所です。
数十年のあいだに、この周辺は自然豊かな環境に囲まれた別荘地や宅地としての開発が進んできました。しかしその一方で、長年にわたる主に車による踏圧によって砂利道がガチガチに締め固められ、建物の基礎や道路の舗装などによって地中の水脈が分断された結果、敷地全体に湿気がこもりやすい状態であることが長年の課題となっていました。
前回の施工後の変化:施主さまの手によって「育つお庭」へ
昨年の施工では、敷地全体の水脈整備、および屋根から落ちる雨水を治める「雨落ち」の施工を行いました。
▶︎ 昨年(2025年6月)の施工の様子はこちら(Instagramリール動画)

施工から1年が経ち、施主さまからは「明らかに植生が変わった」という嬉しいお声をいただきました。生えてくる植物を楽しく観察しながら「風の草刈り」を実践され、ご自身の手で表層の脈を大切に育ててこられたそうです。
草の成長が早く、放っておくとすぐにモサモサと繁茂しがちな広さのお庭ですが、全体的に調和して落ち着いた佇まいを見せていました。日頃からの庭や植物との丁寧な向き合い方が、お庭全体の健やかな「表情」として現れているのを感じます。
また、裏手に作った花壇も崩れることなく、美しく安定した状態を保っていました。

新たに見えてきた課題:家の下を流れる「水の道」の対策
その一方で、1年間じっくりと観察を続けたことで、まとまった雨が降った際の新たな課題も見つかりました。
なだらかな斜面地に建てられた家のため、斜面の上に位置する家・庭で吸収しきれない雨水が施主さまの家に集められ、家の下の基礎まわりをまるで「川」のようになって流れていく箇所が確認されたのです。 建物の基礎が入っているため、地形的にどうしても家の下に重心(負荷)がかかってしまいます。さらに傾斜も家の下を向いているため、雨水が集まりやすい構造になっていたのでした。

そこで今回は、現場の状態を改めて入念に確認し、敷地の高い方から低い方に向けて、雨水を滞留させずに「分散浸透」させていく工事を実施しました。
あわせて、今後も施主さまが継続的に楽しくメンテナンスを行えるよう、三角ホーや移植ゴテなどの手道具を用いた「表層水脈」の整備を中心に施工を進めました。
施工の様子と具体的なアプローチ
① 基礎まわりの改善と、高木の庭への雨水誘導
敷地の裏側では、基礎とプロパンガスの土台がコンクリートで固められており、そこに水が集まってコンクリートの上を滑るように激しく落ちていく状態でした。
そこで、側面の雨落ちを活かしつつ、家とは反対側へ向けて表層水脈を通し、雨水を高木のある庭側へと誘導する導線を作りました。

基礎周辺の水の通り道には、要所要所に石を配置。流れてきた水が石に当たりながら適度に滞留し、蛇行しながら緩やかに流れ落ちていくように工夫しています。

さらに、斜面を段切り(だんぎり)して石を設置し、階段状の構造に仕上げました。特に水たまりになりやすい場所には、深めの点穴(てんあな)を掘り、新たな雨落ちとして機能させています。

② 庭の水脈再生と、自然の素材を活かした花壇づくり
庭の中を通る水脈のうち、土で塞がってしまっていた箇所を開き直しました。外周は空気と水が深く浸透し、常に動くように30cm前後深めに掘り、内側には網の目のように表層5-10cm脈を何本も通しています。

また、敷地内にあった切り株をそのまま活かし、周囲に「石積みの花壇」や、丸太と剪定枝を組み合わせた「柵花壇」を造成しました。





崩れず安定していた裏の花壇には、さらに表層の点穴を無数に施し、地中の脈がより豊かに育つようアプローチしています。
③ 雨落ちの拡張と、玄関側斜面の段切り
大雨の際に、水の勢いで雨水をキャッチしきれず外れてしまうことがあった雨落ちは、少し幅を拡張して受け皿を広げました。
玄関側の斜面にも段切りを施し、雨水が地中に優しく浸透しながら、ゆっくりと流下する構造へと改善しています。こちらの斜面については、今後の土壌安定と景観のために「芝を敷いてみるのはいかがでしょうか」と、今後のステップとして提案させていただきました。

工事を終えて:自然と共に、少しずつ整えていく暮らし
今回のメンテナンスは、1日工事で無事に終了いたしました。
大地の再生は、一度の施工で完成するものではありません。大切なのは、施工のあとに自然がどう応えてくれるかを「観察」し、手を入れ続けることです。
今後は、雨の日の様子を施主さまに観察していただきながら、今回整えた表層の水脈整備の手法(三角ホーや移植ゴテを用いたメンテナンス作業)を使って、水を分散浸透させながら施主さまご自身の手で庭を育てていただきます。
自然の呼吸に寄り添い、自分たちの手で少しずつ場を整えていく——その積み重ねが、お庭だけでなく、この豊かな地域全体の健やかな循環へとつながっていくことを願っています。
▶︎ 今回の工事の様子はこちら(Instagramリール動画)
