[レポート]7/6(土),7(日) 大地の再生講座〜風路を整える

相模湖の湖畔にあるシェアハウス『MoroMoroHouse』にて、2024年4月から大地の再生による環境改善を定期的に行っています。

前のオーナーさまも日常的に生活していた家ではなかったため、庭と敷地周辺の手入れがなされず、長年放置されたことで藪化していました。

本来は、日当たりと風通しがよく、敷地の隣の森林の風景、鳥の鳴き声などが聞こえ、湖畔の景色も眺められる、ポテンシャルの高い場所です。

施主さんの「心地よい循環のあるシェアハウス」「人が自由に出入りして交流できる場所」という想いを実現するために、大地の再生講座の形式で多くの方にご参加いただきながら環境改善を進めていくことにしました。

4月の講座開始前に、施主さんが庭と隣地の藪払いを行っていただいたあとの状態(施工前)がこちらです。

施工前の庭の様子(2024年3月)

庭一面がコンクリートで覆われており、花壇もコンクリートブロックで囲われています。

まず着手したのは、シェアハウス周りの水脈整備から。

土の状態を五感で観察しながら、水脈をどこに入れるかを考える
土の状態を五感で観察しながら、水脈をどこに入れるかを考える

土のあるところにはすべて水脈を入れ、水と空気の通り道を線で繋いでいくことで、その場の水と空気が動き始めます。

玄関付近の石畳や花壇にも、移植ゴテで水脈を入れました
玄関付近の石畳や花壇にも、移植ゴテで水脈を入れました

植栽の根回りや水脈の途中には点穴を入れ、水の縦浸透と空気の上下の動きを促進するようにしました。

水脈整備で1ヶ月庭の変化を追ってみたところ、コンクリートブロックで囲われた花壇の土の状態が悪く、野菜を植えても育たず。

数日晴れている割には、土が水気を多く含んだままになっており、水が抜けていないことがわかりました。

庭一面に貼られたコンクリートと、花壇のコンクリートブロック
庭一面に貼られたコンクリートと、花壇のコンクリートブロック

恐らく、花壇の一番下の部分もコンクリートが打たれており、コンクリートの水槽のようになっていると思われます。

そこで、花壇の角1箇所を斫り(はつり)、斫った瓦礫で組み直して、この部分から水と空気が抜けるように改善。

花壇の角を斫ったブロックで改めて組み上げ
花壇の角を斫ったブロックで改めて組み上げ

これにより花壇の土の状態が改善し、畑の作物も見違えるように成長し始めました(施主さん談)。

敷地内(庭・花壇)の状態改善をさらに進めるためには、完全にコンクリートで覆われている庭を斫り、東西南北に水脈を通すことが必要です。

すぐに着手したいところではありますが、酷暑かつ日向での作業となるため、秋以降で実施します。

7月の講座はシェアハウスの敷地外、隣地の森林の改善に着手しました。

このシェアハウスは、斜面の際のコンクリート擁壁で固められた場所に建っており、擁壁から下は湖畔まで斜面になっています。

急斜面を降りて湖畔まで歩いていけます
急斜面を降りて湖畔まで歩いていけます

上から下まで人が通る赤路があり、湖畔まで降りることが可能です。

しかしこの赤路も、人の出入りはありますが手入れはほぼされていないため、全体的に鬱蒼としています。

赤路の入り口(作業前)
赤路の入り口(作業前)

また、前のオーナー様含め、恐らく庭で出たゴミ(枝木、資材など)を廃棄するために斜面下へ投げ込んでこられたので、それが地層のように積み上がり、湖畔からの吹き上げの風を遮断していました。

家からこの欅のあたりに剪定枝や資材ゴミなどが投棄されていました
家からこの欅のあたりに剪定枝や資材ゴミなどが投棄されていました

まずは人の通り道を整備するため、散乱している枝木を取りまとめ、生えている篠竹を刈り取り。

斜面変換線に水脈を入れて、赤路の詰まりを改善します。

斜面変換線に水脈を掘る
斜面変換線に水脈を掘る

取りまとめた枝木や篠竹を資材にして組み込んで仕上げました。

竹炭、枝、笹で仕上げた水脈(作業後の赤路の様子)
竹炭、枝、笹で仕上げた水脈(作業後の赤路の様子)

ちなみに炭は、藤野地区で有志の人たちで行われている竹林整備と竹炭焼きで作ったものを利用しています。

2024年4月に間伐した竹を焼いて竹炭を作りました
2024年4月に間伐した竹を焼いて竹炭を作りました

赤路のはけ地側には、枝木をしがらませながら低い柵のようにして、斜面の下へ落ちていく泥水を止める役割を持たせました。

左手が水脈、右手がしがらみの柵

斜面の上から下へ、雨の時に水が落ちていると思われる筋の部分には土留めを設置。

土留めを設置するための杭打ち
土留めを設置するための杭打ち

急傾斜で水に勢いがつき、周辺を削り取っていきやすい地形のため、土留めで水の勢いを止めつつ、地中への浸透を促します。

欅の根本に積まれた枝木、篠竹をバラシ、それを利用して斜面に土留めをいくつも設けました。

斜面の土留め(作業後)
斜面の土留め

赤路で傾斜が急なところがあり、歩くたびに路自体が削れて水を集めてしまうため、土留めのステップを作っています。

赤路に作った土留めのステップ
赤路に作った土留めのステップ

欅の根本に捨てられていたコンテナは、ロープをつけて引き上げ、根本とその周囲に風が吹き抜けるように。

さらに、敷地の北側に無造作に積まれていた剪定枝も整理しました。

山積みになっていた剪定枝を整え、刈払機で風路を通しました
山積みになっていた剪定枝を整え、刈払機で風道を通しました

建物に囲まれて風のない場所でしたが、作業後は風が通り抜けていくことが体感できるほど風通しが改善しています。

こちらが作業後の赤路です。

赤路の入り口(作業後)
赤路の入り口(作業後)

最後に…

赤路を湖のほとりまで降りていったところ、大きな岩盤に欅の木が根を絡ませて聳えていました。

岩盤に根を絡めた欅
岩盤に根を絡めた欅

ちょうど地形的に、カーブの弧の部分にあたり、水と空気が動きやすく、石自体がミネラルを含んでいるために巨木になる条件が揃っているところになります。

敷地の方に目を向けると、敷地の斜面下にも数本の巨木があり、この木々が大地を支えてくれていました。

木が大きくなると、人にとっては邪魔なもの(景色が見えなくなる、落ち葉や倒木が大量に出る、大きすぎて剪定できなくなるなど)として捉えられやすく、人の都合で切り倒してしまいます。

もしこの場所でそれを行っていたとすると、根によって支えられている機能が失われるので、斜面崩壊や大雨による土砂崩れなどが起きていたかもしれません。

人の視点を一旦横に置いて、その場の地形や植物、土壌の様子を見て、そこで何が起きているのか、どのような状態になっているのかを考察する。

その上で、手を入れるべきか、入れないほうがよいのかを考える。

持続的な社会を実現していくために、持っておきたい視点だと思います。

湖畔にて、五感を使って場の状態を観察中
湖畔にて、五感を使って場の状態を観察中

次回は9月頃を予定しています。

講座内容が決まり次第お知らせしますので、お気軽にご参加ください。

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