Cafe Natural Rhythm 大地の再生講座レポート

富士山の雪解け水の流れる桂川沿いにあるCafe Natural Rhythm(カフェナチュラルリズム)にて、大地の再生講座を開催しました。

祖父の代から続く大工であるカフェのオーナーさんが、土地を崩し、使い捨ての材料を使う現代建築の大工仕事に疑問を感じ、自分のやりたいように生きるため、ご友人の力を借りて古民家の廃材や自然の木や石などを使い、セルフビルドで小屋を作りカフェを営んでいます。

以前から、駐車場〜お店の道が雨のたびにぬかるんでいたので「なんとかしたい」と思われていたようです。

このぬかるみを解消するために、現代土木のコンクリートやアスファルトで埋めてしまうと、土(地球)に直接触れることのない生活となることに違和感があり。

できるだけ、現在の土の道を維持する方法を考えていらっしゃいました。

数年前の台風以降、少し元気がないと感じていた敷地内の木が幹の途中で折れてしまったことをきっかけに、他にも元気のなくなっている木の樹勢回復のため、大地の再生に工事のご依頼をいただきました。

こちらが、駐車場(入り口)からお店を繋ぐ道(通路)です。

お店(写真奥)へとつながる通路(2024年4月 施工前)
お店(写真奥)へとつながる通路(2024年4月 施工前)

カフェが斜面地に建てられているため、主要道路から小道に入り、坂を下っていった先にカフェの入り口があります。

カフェの入り口にて、茶色の部分が雨水で抉られているところ
カフェの入り口にて、茶色の部分が雨水で抉られているところ

この坂の傾斜がきつく、雨水が速度をつけてカフェの入り口に流れ込んでくる形状になっています。

そのため、コンクリートと土の際の部分が抉られ、ここが水の道となって入り口の方へ流れ込み、入り口付近の土も抉られていくようなかたちでした。

石や丸太を用いた水脈や抵抗柵を作り、水を留めて浸透させる処置を行うことで改善が見込めますが、今回は見立てのみとさせていただきました。

初参加の方向けに座学を行ったのち、スタッフ・参加者が合流して敷地内をフィールドワーク。

斜面地に小屋や広場、テーブルなどが設置されています
斜面地に小屋や広場、ベンチなどが設置されています

様々な場所にベンチや椅子、置き物などがありますが、これらを設置するときに「空気と水を遮断しないようにする」と、風化を抑えることができます。

斜面変換線は空気と水の詰まりやすい箇所なので、ここにモノを置くとその詰まりを促進してしまいます。

人の目線に、空気と水の視点を加えることが、場所作りのポイント(講師の藤井さん)です。

通路から川沿いの方へ移動して、周辺の見立てを実施。

斜面には、通路から落ちてくる水を止めるために入れたと思われる石段がありました。

この石の下に有機物(枝や落ち葉)を入れ込むだけでも、石と土の間に枝葉による隙間ができ、ここが通気通水、泥越しや濾過、浸透のきっかけを作ってくれます。

敷地内に生えていた1本の梅の木は、枯れ枝が多く、本来は枝先まで葉があるはずなのに、それがありません。

梅の木
梅の木

陽当たりではなく、地中の水と空気の状態が悪いため、木にそれが現れて(職人の根岸さん)います。

一方で、高架橋のコンクリート際に生えている木は見た感じ元気。

周辺の木や植物の状態を見比べて、なぜこの木だけ悪いのか?何が原因なのか?を考えていくようにしたいです。

ちなみに…苔の有り・無しでも、その場の状態を見ることができます。

例えば、土が表出している(土しかないところ)は、状態が安定していないということ。

デッキの下部分、風と水の通りが遮断されて表土が剥き出しになっていました
デッキの下部分、風と水の通りが遮断されて表土が剥き出しになっていました

このような場所には、土留めを入れて水が浸透するようにして、周辺の草を刈ったり遮蔽物を移動させて風通しをよくしてあげると良くなります。

苔のあるところや、下草の生えているところは、無理にいじらなくてよいです。

通路の方へ戻り、作業開始。

通路沿いの樹木が枯れ枝を抱え元気がない状態ですが、これは、斜面から流れ落ちてきた泥が通路に溜まり、その泥が人の往来で固められていったことで地盤が固まり、通気浸透が悪くなったことが要因と思われます。

斜面変換線の通気通水浸透機能の改善に着手しました
斜面変換線の通気通水浸透機能の改善に着手しました

そこで、水と空気が詰まりやすい斜面変換線に水脈を入れつつ、土留めを斜面全体に作り、泥止めと水の浸透を促すようにしました。

参加者みんなで作った土留めの仕上がり
参加者みんなで作った土留めの仕上がり

弱っていた木の根本にも点穴を入れ、炭・枝葉・石を用いて地中へと水が浸透していく処置を。

根回りに枝葉と石を用いた点穴
根回りに枝葉と石を用いた点穴

今日の作業のために、オーナーさんが焼き杭を多数作っていただいたので、ありがたくフル活用です。

焼き杭をたくさんご用意いただきました
焼き杭をたくさんご用意いただきました

小屋の裏手も段切りをして、焼き杭と枝葉による土留めを入れていきます。

小屋の裏手で段切り中
小屋の裏手で段切り中

裏手は特に水気が多く、剣スコップで簡単に斜面が掘れ、長めの焼き杭も簡単に地中へと入っていく状態。

相当に水が溜まっていたように思われますので、今回の処置が水捌け改善のきっかけになればよいです。

裏手の作業後
裏手の作業後

踏み固められていた通路には、移植ゴテで5-10cmの小さな穴、または切り込みを入れたあとに、炭と落ち葉でカバー。

移植ゴテやロングマイナスドライバー(通称グリグリ)で浸透のきっかけ作り
移植ゴテやロングマイナスドライバー(通称グリグリ)で浸透のきっかけ作り

小屋からカフェの入り口まで傾斜があり、この傾斜を雨が滑っている状態だったので、これらの点穴を伝って雨水が地中へと浸透していくようになります。

普段は人が通る場所のため、点穴につまずいてしまわないよう、炭と落ち葉を入れてできるだけ平坦な状態に仕上げました。

できるだけ多くの点穴を入れています
できるだけ多くの点穴を入れています

この通路の真ん中あたりは、緩やかな傾斜から急激に落ち込む場所になっており、雨水が勢いをつけて流れ落ちている状態でした。

横断水脈を入れる場所の見立て中
横断水脈を入れる場所の見立て中

このままにしておくと、雨が降るたびに雨水が地表を削っていってしまうため、横断水脈と土留めの施工で水を一旦留め、地中へ浸透させるようにしました。

既に雨水が地表を抉り、通路の表面はV字になっています。

丸太を横に置いても中央部分に大きな隙間ができてしまうため、この丸太が一本横にはまるように、両側を掘り(段切り)、横断水脈のような状態にします。

写真左上の部分に点穴を入れています
写真左上の部分に点穴を入れています

炭を入れてから、石を組んでいきました。

石は大きいものと小さい(細い)ものを組み合わせ、互いの面で噛み合わさるようにすると、隙間から土が入らなくなるので泥越しの機能が作れます。

何度も丸太を置き直し、石を入れつつ、収まりの良い状態を作ります
何度も丸太を置き直し、石を入れつつ、収まりの良い状態を作ります

焼き杭を丸太を挟むように打ち込んで固定。

水が落ちていく方には点穴を入れて地中への浸透を。

このままにしておくと、丸太の端から水が流れて土を攫っていくので、植栽を施して、植物の根で泥越しと地中への水の浸透を促します。

丸太の端に植栽
丸太の端に植栽

こちらが仕上がりです。

横断水脈・土留め
横断水脈・土留め

ステップのようなかたちになりました。

被せた土は人の往来で踏まれていくことで沈んでいくと思われますが、引き続き通路を伝って泥水が流れてくるため、この泥により段々と落ち着いてくると思われます。

ステップのまわりには落ち葉をたくさん撒いてあり、この落ち葉があることで微生物により分解されていき、土の団粒化が進み、浸透しやすい地面に変わっていきます。

もう1か所、傾斜の強い場所があったため、根岸さんとオーナーさんにて、石段作り。

斜面が踏み固められ雨水が流れ落ちていかないよう、石のステップを設置
斜面が踏み固められ雨水が流れ落ちていかないよう、石のステップを設置

段切りしたあと、炭と落ち葉を敷いて、石を設置。

隙間も落ち葉と石をうまく組み合わせて、泥越しと浸透の機能を設けます。

丸太の土留め(ステップ)と同様に、端に植栽をして、こんな風に仕上がりました。

石を用いた土留めのステップ
石を用いた土留めのステップ

一通りの作業を終え、ウッドチップを撒いてグランドカバー。

施工後の通路はこのような風景になりました。

施工後の通路の様子
施工後の通路の様子

今回の講座はここで終了です。

敷地面積に対して、今回の作業はまだまだほんの一部分。

今回施工したところも、これで終わりではなく、今後の場の様子を観察し、また何か問題が出れば、それは何なのか?それをどうするか?この繰り返しを楽しんでいただければと思います。

地域の人、関わる人たちが、この場をどうしていくか?

みんなで考えて、みんなで行う。

この土地と一体化してできる楽しさ、やりがいが、この場所にはあります。

空気と水の視点も持って、人にとって・自然にとって心地よい場所にしていければと思います。

秋頃に改めて大地の再生講座を開催予定ですので、内容が決まりましたらWEBやSNSでお知らせします。

施工から数日後…

施工から数日経過後、カフェのオーナーさんからメッセージをいただきました。

施主さんの感想、そして場の変化についてお話しいただいていますので、原文転載させていただきます。

遅くなりましたが、先日は本当にありがとうございました。
終わりの挨拶で秋までそのままにしておくと言いましたが、次の日にはつい2、3箇所穴を開けて炭や枝、落ち葉を入れてしまいました(笑)。
今日はあいにくの雨でしたが、日にちも立っていないにも関わらず、この雨が待ち遠しかったので、家からお店に来るのが楽しみでした。
それなりの雨量があったにもかかわらず、いつもお店の入り口部分で水が溜まり、ぐちゃぐちゃになるところが、今回は水溜まりもなく、気持ちよく歩けました。
坂の途中の段のところは、雨量が多い時には少し水が溜まりましたが、雨量が少なくなると、水たまりもほとんどなくなり、水の引きの早さを実感しました。
そしてお店の裏も見てみましたが、いつもぐちゃぐちゃしていた場所もスムーズに歩けるようになっていました。
お店の空気の抜けも変わりお店の空気感も良くなった感じがします。
お店の通路を歩くのも何だか楽しい気がします。
皆様のご協力に心から感謝申し上げます。
この改善により、お客様にもより快適な環境を提供できることを嬉しく思います。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

オーナーさんご夫婦には、美味しいパンとお茶をたくさんご用意いただきました。

愛情たっぷりの優しいパンでした
愛情たっぷりの優しいパンでした

作業の心地よい息抜き、パワーの源となりました。ありがとうございます!

また次回もよろしくお願いいたします。

  • 講師:藤井麻紀子
  • 職人:根岸大輔
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